2014年11月23日日曜日

【アマデウス-ディレクターズカット】1984・2002年アメリカ映画

また、地震ですね。このところ、地震に火山の噴火にと、さらには台風や大雨、ゲリラ豪雨とか、天変地異とまではいかないまでも、おかしな現象が立て続けに起こっているように感じます。
「地球が怒っている」とか「神の怒りが」とかいう人も居てそうですが、信心深くないクリスチャンであるわたくしは、そういう人間に対する警告、というようなことはあまり信じませんね。なにか科学的な根拠があるに違いない、と考える方です。それが何か、は神のみぞ知る。って、あれ?

「アマデウス」を、初めて見ました。実はもうすぐモーツァルトのレクイエムを歌うんです。もちろん合唱団の一員として、ですけどね。グッドタイミングだったなと思いますね。

とはいえ、多くの事柄はフィクションでしょうけど。まあ、映画というものはそういうもの。そういうところは差し引いてい考えて楽しむのがいいんじゃないでしょうか。そういう寛容なところがなければ。ドキュメンタリーじゃないんだし。

実話かどうかということよりも、この映画のテーマである「神の御心はどこにあるのか?」(勝手に考えました)というものがとても明確に出ていましたね。まあ「神」を出さなくても、人生の皮肉、不条理といったもの。それに振り回される人生。そのテーマは普遍的なものでしょう。

音楽を愛し、神に祈るサリエリに、神様は才能を与えず、下品で不遜なモーツァルトを愛された(らしい)。モーツァルトの作り出す音楽に感動を覚えつつ、嫉妬もし、そして神を呪うサリエリ。

まあ人生とはうまくいかないものです。何事につけても。
それがこの映画には散りばめられていましたね。
神様の不公平さを呪い続けるサリエリもそうだし、そのサリエリに悔悟を求めようとして逆に打ちのめされる若い神父もそう。
思い通りにはいかないことだらけの人生を送るしかない人々。
人間誰しも、そうやって生きていくしかないのかもしれません。

公開当時はすごく話題になっていましたが、見逃していました。でも今になってから、つまりモーツァルトの音楽をいっぱい知ってから見て、良かったと思います。かつては知らなかった曲がいっぱい散りばめられているのですから。

2014年11月22日土曜日

【オリバー!】1968年・イギリス映画

リパッティの弾くショパンを聴きながら書いています。
音楽を愛する人は多いけれど(自分もその一人だと思っています)、音楽に愛される人というのはそんなにいないような気がします。
リパッティは、音楽に愛された、というよりもピアノに愛されていたような気がします。古い録音しか残っていないのに、ピアノの音がほんとうにきれいに澄んでいるように聞こえますね。

「オリバー!」を見ました。ディケンズ原作のミュージカル映画。
何年か前に、ポランスキーが監督した「オリバー・ツイスト」を見ましたが、そちらは原作に忠実なようで、とても人間臭く、暗い人間模様が息苦しいくらいでした。

ミュージカルになると一味も二味も違っていて、なにしろ貧しい人たちの活き活きとしていることが救いです。そのほとんどが泥棒だったりするのですが。

そしてミュージカル映画といえば、歌と踊りですね。
特にこの作品では、大勢の人たちが次々に踊りの輪に加わっていく群舞がすばらしい。
一つの通りを、ひとつの広場全体を舞台として踊り広がっていくさまは圧巻です。これぞ映画。

そして根っからの悪人は悲壮な最期を遂げ、根は優しい悪人は優しい悪人のままで、善人は恵まれるというハッピーエンド。マーク・レスターのあどけなさ。ジャック・ワイルドのかっこよさ。フェイギン役のロン・ムーディーは、特に絶品でした。

世の中、悪いことばかりじゃない、と信じたくなるような。そうもいかないみたいなんですけど。現実は。やれやれ。

2014年11月21日金曜日

【天井桟敷の人々】1945年・フランス映画

録りためていた映画の消化。
フランス映画史上、最高傑作の呼び声高い作品です。

3時間を超す大作ですね。でも飽きることなく見れました。とても面白かった。

よく言われるように、脚本が、というか、セリフが素晴らしい。
有名な「愛する者同士には、パリは狭すぎる」を筆頭に、もう全てのセリフを書き留めておきたいと思うくらい、めくるめくような言葉の奔流。しかもそれがわざとらしくないところがすごい。

さらにそれに対抗するかのようなバチスト(ジャン=ルイ・バロー)のマイム演技。劇中劇での表現力の高さには圧倒されます。
友人でありライバルでもあるフレデリックが、バチストの舞台を見て役者としての情熱を再燃させるシーンは、それぞれが実際に素晴らしい演技ができてこその説得力、でしょう。それができる俳優としての技量の高さ。

そしてヒロインのガランス(アルレッティ)。最初はどうってことない町の女風で、しかし言うことがとても粋で、その魅力に引き込まれるという設定が、映画が進むに連れて納得させられてしまいます。

ラストシーンは、なんなんだろうと考えさせられてしまいます。落ち着くべきところに落ち着くわけではないというところが、フランス好みなのでしょうか。
「これから先のことは、さあ皆さんでどうぞご想像ください」というところなのかも。

ともかくも、今やこういう「粋なセリフ回し」で見せる映画というものはなくなってしまったような気がします。その意味では、貴重な作品なのでしょう。

2014年11月20日木曜日

【トゥモロー・ワールド】2006年・イギリス映画

メジャーリーガーとの日米野球も終わり、週末のフィギュア以外は(それも録画で見るに限る。何しろくだらないVTRが多すぎる)時間ができて、録りためていた映画を消化する日々。

「トゥモロー・ワールド」はイギリス映画、らしい。知っている俳優はジュリアン・ムーア、ぐらいかなと思ったけれど、ヒッピー老人がマイケル・ケインだったというのをあとで知って驚いた。全くわからなかったなあ。

未来のイギリス。人類の生殖機能が失われて久しく、世界にはテロが横行。ロンドンだけが治安を(強制的に)維持していて、世界中から不正入国が相次ぎ、それをさらに強制的に取り締まる政府と、それに抵抗する過激派集団。そのリーダーであるジュリアンの元夫であったセオは、ジュリアンに頼まれて少女キーの逃亡を手助けすることになる。なんとキーは妊娠していたのだった。

というわけで、前半は比較的静かに、ちょっとイギリス流のユーモアやペーソスもあったりするのだが(クリムゾン・キングの宮殿が流れたり、ピンク・フロイドの「豚」が発電所の上に浮かんでたり)、後半はやたらに人が撃たれるは、戦闘シーンが(リアルに)あるはで、何じゃこの映画は! と思ったのであります。ジュリアン・ムーアは早々に死んでしまうし。

終盤の戦闘シーンは、ドキュメントを見ているような迫力で迫ってきますが、だったらそういう映画として全編を通せばよいものを、と思ってしまいます。この映画を作った人は、どういうコンセプトで撮り始めたのだろうか。よくわからないけれど、持てるもの、表現したいものを全て注ぎ込んで、結果、中心となるテーマがあやふやになったかも。

最後に「トゥモロー号」が出てくるから「トゥモロー・ワールド」なのかな。原題は「Children of Men(人類の子供たち)」というらしい。子供は出てこないのだから、この題名は??? というところから考え始めるのもいいかもしれません。って、何も浮かばないのだけれど。

2014年11月11日火曜日

直前練習

羽生選手の強行出場(と言っていいでしょう)には、賛否両論あるようですね。
確かに、これからのことを考えると、というか、あの状況で出場するのは、無謀であったでしょう。
それでも滑ってしまったからねえ。
そして、高得点を出してしまった。

まるで漫画。出来の悪いスポ根ドラマのシナリオのようです。
で、朝から何度も、衝突シーンを放映するテレビの節操の無さにも、少々腹が立ちますね。
実際の映像をそんなに流してどうなる? と思います。

で、まあ結果はよかったわけですが。
しばらくは休養でしょう。
しっかり休んでほしいです。
年末の、全日本ぐらいを目標にしてくれたら、それでいい。

日本のスポーツ業界(そんなのがあるのか)は、どうやら冬のスポーツは羽生だのみのところがあるようですが、ちょっと改めてもいいのでは、と思いますね。
かつての浅田真央だのみよりも、さらにエスカレートしそうで、傍で見ているとあまりいい気分ではないですね。

ぶたこが昨日つぶやいて(ツイッターじゃなく)いたし、今朝フィギュア解説の佐野稔さんも言っていたけれど、直前練習を6人で行うのは、もう無理があるような気がしますね。
特に男子は。
男子のスケートは、今や4回転は必須。
4回転を跳ぼうと思ったら、今までより以上のスピードで滑らなければいけません。
だいたい時速30キロぐらいですと。
「昔はそんなに速く滑ることはなかった」というのが佐野さんの話。
「僕の現役時代の、さらにもっと前から直前練習は6人で、となっていた。これはもう今の時代では危険すぎるのではないでしょうか」
「今シーズンから、名前を呼ばれてから演技を始めるまでの時間が、昨シーズンの1分間から30秒になった。その分時間は取れるはずです。6人じゃなくて、4人ずつにするとか。選手の安全のために、その時間を使ったらいいんじゃないかと思います」

どうも最近のフィギュアのルール変更などは、競技の面白さを増すことに気をかけていて、選手の安全などは「今のままで十分やん」と思っているようなところは、確かにあるように思いますね。
今の時代、それではダメ。
選手が安全に、安心して競技に集中できるように、見ている方も安心して選手を応援できるように、工夫すべきところはたくさんあると思います。

2014年11月9日日曜日

フィギュアスケート GPシリーズ(前半)

フィギュアスケートの季節です。グランプリシリーズも、早くも6大会のうちの3つが終了しました。
浅田真央の休養、高橋大輔、鈴木明子の引退宣言などで、やや盛り上がりにかけるかと思われた今シーズン。
グランプリシリーズでも、見どころは少ないかな、まあ純粋に競技を楽しもう、などと思っていましたが。
いやあ、初戦のカナダ大会から泣かされっぱなしです。
それも男子のスケートに。

ただ、カナダ大会、アメリカ大会では感動の涙でしたが、今回はちょっと違っていました。
日本人選手の中では、金メダルに一番近い、というより、世界中で一番「金」に近い羽生結弦が出場した、中国大会。

男子の試合を生中継していたのは、時差が少ないからという以上に、羽生人気があると思いますけれど。
だから、その瞬間を見てしまいました。
そして叫んでしまいました。
おそらく、多くのフィギュアスケートファンと一緒に。

試合前の本番前の、6分間練習での、ハン・ヤン選手と羽生選手の衝突。
ふたりともこれからジャンプをしようとしている、一番スピードに乗った状態での衝突でしたから、衝撃もすごかったでしょう。
ふたりともしばらくは起き上がれなかったみたいだったし。

いままでも、何回か同じようなシーンは見たことがありますね。
ちょっとぶつかったぐらいだったら、「スマンスマン」ですみますけど。
今回のようにトップスピードでぶつかったら、少なくともどちらかの選手は棄権ですね。

今回も、ハン・ヤン選手は棄権する、という発表だったんですが。
いざ本番、となると出てきましたね。
びっくりしました。
地元開催、ということもあっただろうし、どんな成績でも、一応点数が残れば「成績」として残るわけだし。
などということを考えたのかどうか、分かりませんが。

テレビ解説の佐野稔さんも言っていましたが、こうなると「とにかく無事で滑り終わってくれ」ということしか考えられません。
応援するもなにもあったもんじゃないですね。

6分間練習もせずにいきなり滑って、それでもいくつかのジャンプは成功させていたし、頭がふらふらしていただろうに、スピンもしていたし。
なんというか、想像を絶するファイトでした。

そして羽生選手も、頭に包帯、顎には止血という状態で、4回転ジャンプに挑んでいました。
こちらはいちおう6分間練習はしていたけれど。
衝突の影響は大きかったはず。
それでも予定していたジャンプの要素は(後半の4回転トウは回避したものの)すべて跳ぼうとしていたし(5回転倒)。

ふたりとも、とにかく無事に最後まで滑りましたね。
どちらの演技中にも、途中から「もうええよ、もうええよ」という言葉しか出てこなくなっていました。

そして、点数。
びっくりしましたね。
ハン・ヤンは、思っていたような点数だったけど、羽生選手は一人を残しての1位得点。

なんかもう、よおわかりません。
羽生選手、涙涙。
それを見て、テレビの前のおじさん(わたくし)も涙涙。

ふたりのアスリート魂(そんな言葉はあまり好きじゃないですけど)を見ましたね。
脱帽です。

次の大会まで、ふたりとも少しは間があるので、しっかり体を治して、「本来の演技」を見せてほしいですね。

2014年11月3日月曜日

9月・10月の読書

9月の読書感想文を書いていないなあと思っているうちに、10月も飛び去ってしまい、もはや11月も2日(日付が変わったのですでに3日ですね)です。いやはや。

もう、何かをやり遂げようとか、そういう欲もなくなってきました。
ちょっと言い訳をするなら、あんなにタイガースが、最後の方まで頑張るとは思いませんでした。
切れかけたエンジンを何度かふかしなおすような気分で、かえって疲れました。
でもいつもより長く楽しませてくれたので、これはこれでよしとしましょう。後はまた来年、ということで。

というわけで、9月の半ばから10月いっぱいにかけて読んだ本の一覧です。


【炎上する君】西加奈子(角川書店)

行ってきましたよ、西加奈子さんの講演会。いやあ楽しかったなあ。ますますファンになりました。新刊も発売なったから、買いに行こうかな。


【超高速!参勤交代】土橋章宏(講談社)

突如幕府から言い渡された参勤交代命令。しかも日数がほとんどない。お金もない、人材もない藩主がどうやって幕府の横暴に立ち向かうか、という痛快なお話です。映画化もされましたか。確かに映画的。


【絶対!うまくなる 合唱100のコツ】田中信昭(ヤマハミュージックメディア)

絶対うまくなりそうなので、手元に1冊置いておきたくて、ついつい買ってしまいました。


【トップスケーターの流儀】中野友加里(双葉社)

これからソチオリンピックのシーズンに入るスケーターに元スケーターで現テレビ局職員となった中野友加里がインタビューしています。もともと友人だった人たちに聞いているので、肩肘張らず、時折本音も垣間見えて楽しいですね。


【スーラ】トニ・モリスン(大社淑子訳・早川書房)

貧しい地区に生まれ育った子どもたち。秘密を共有することになった二人の行く末。サスペンスタッチですな。


【ガープの世界】ジョン・アーヴィング(筒井正明訳・サンリオ出版)

アーヴィングの出世作ですね。いつも長編を書くんだけれど、どこか短編の寄せ集めのようなところもありますね。一つ一つのエピソードは面白いんだけど。まあ好き好きかなあ。あと、アメリカに詳しくないと面白さは半減するかな。


【結婚は人生の墓場か?】姫野カオルコ(集英社文庫)
【リアル・シンデレラ】姫野カオルコ(光文社文庫)
【ツ、イ、ラ、ク】姫野カオルコ(角川文庫)

色んな顔を見せてくれる姫野カオルコ。ある意味で「恐怖小説」ともいえる「結婚は人生の墓場か?」。希望を垣間見せる「リアル・シンデレラ」。リアルでかつファンタジーに溢れる(と思うのはわたくしだけ?)「ツ、イ、ラ、ク」。どれも圧倒的なパワーを感じます。ジャンル分けのできない作家ですね。でも間違いなく、どれも姫野カオルコであるところがすごいです。


【銀二貫】高田郁(幻冬舎文庫)

時代小説なんだけど、大阪が舞台で、しかも商人が主人公というところがいいですね。つまりサムライの論理が通用しない。そこが痛快です。わたくしにとっては。そして感動的です。


【男と点と線】山崎ナオコーラ(新潮文庫)

なんか普通っぽいようにみえて、「え?」と思わせる。そんな話だったような(すみません、憶えていません)


【プラネタリウム】梨屋アリエ(講談社文庫)
【ピアニッシシモ】梨屋アリエ(講談社青い鳥文庫)
【スリースターズ】梨屋アリエ(講談社文庫)

いろんな人の思いが交差する連作「プラネタリウム」が面白かったので、続けて同じ作家のものを読んでみたんですけど、「ピアニッシシモ」はいろんなものを短い中に詰め込みすぎたみたいで、「スリースターズ」は、途中は面白かったけれど、だんだんライトノベル調になったところでパワーダウン。でも、長い話でも最後まで読ませる力量を感じます。無理して短い話にしないで、長いものを書いてくれたらなあ。


【創作の極意と掟】筒井康隆(講談社)

ちょっとふざけて「創作」について書いているのかと思わせておいて、実はシリアスなことをしっかりと書いている、というこの作家独特の言い回し。堪能します。


【りすん】諏訪哲史(講談社文庫)

芥川賞受賞の「アサッテの人」に続く作品。全編会話。意気込みは認めるけれど。ちょっと空回り気味。余分なことが多すぎたかな。でも書いておかないとわからないこともあるから、難しいですね。で、そんな作家の苦労はよくわからず、読み手は、面白いか面白くないかで判断してしまうのです。


【獣の奏者-外伝・刹那-】上橋菜穂子(講談社文庫)

本編「獣の奏者」に出てくるエリンの出産話など。ファンタジーなんだけどリアル、というところがこの作家の特徴なのでしょうが。こんな話、読みたいかなあ、というのが正直なところ。ドラマはあるけれど、伝えたいものは何だったんだろう。


【わたしがいなかった街で】柴崎友香(新潮社)

芥川賞受賞おめでとうございます。この作品ではないですね。過去に起こった出来事が現在につながっている。過去に、その場所に、わたしはいなかったんだけれど。いたら、どうなっていただろう。なんていうことをぐるぐるぐるぐると考えるような。私小説でもなくSFでもなく。不思議な感覚です。


野球のシーズンも終わり、フィギュアスケートの応援にシフトしています。
毎年、今年は200冊ぐらい読もう! と目標を立てるのですが、毎年果たせずに終わっています。
今年もそうなりそうな気配。
まあ、たくさん読めばいいというものではないですけどね。
でも、どんな本でも、読んでみなければ、面白いかどうかはわからない。
たとえ多くの人が絶賛したとしても、自分の心に響くかどうかはわからない。
だから読むしかないのですね。
楽しむためには、ある程度の忍耐と苦労も必要ということですか。
今年もあと2ヶ月。
年末に向かって忙しさは増すばかりですが、乱読はやめられません。